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作るひとの話

里山循環を実践!/fu do ku kan Bamboo

「可愛い!」
車一台分が通れる山道を不安になりながらひた走り、ようやくたどり着いた周南市須金地区の畑で見た唐辛子は、思った以上にかわいかった。
春ころに種をまき、夏から秋にかけて収穫される唐辛子たち。
伺ったのは11月。もう収穫も終盤戦。
それでも様々な種類の唐辛子たちが畑で待っていてくれた。

作っている唐辛子は50品種以上。
夏の最盛期にはもっと青々と唐辛子が実っているのだという。

少しだけ残っていた唐辛子の花も白くて小ぶりでかわいらしい。
The唐辛子、という形のものから、パプリカのようなぷりぷりとして甘くておいしそうな唐辛子、そしてフレッシュな状態でサラダに入れて食べることもあるという品種の小粒の唐辛子。
いわゆる「唐辛子」は赤くて乾燥しているものを想像していた。使い方もそんなに広くなくて、ラー油や一味唐辛子などスパイスとしてちょっとだけ追加する、というイメージだった。
だけど、バンブーさんが出す商品を見ていると、唐辛子ってこんなに汎用性があったの?!と驚く。

加工場にもお邪魔すると、そこには色とりどりの唐辛子が。
あまりにもつやつやとしていて、思わず手を伸ばしそうになる。

乾燥機に入っていた唐辛子も見せてもらった。
そうそう!これこれ!よく見るやつ!!
「なんだか出汁っぽいにおいがするんだよー」と言われてゆっくり空気を吸ってみる。
ほんとだ。
乾燥してぎゅっと実のしまった唐辛子からはうまみが詰まった匂いがしてくる。

唐辛子を育てる農家さんはたくさんいるけど、それだけをメインに作り続けている農家さんは県内ではおそらくBambooさんだけ。
ましてや自分たちで六次産業化までしている唐辛子農家さんはそうそういないのでは?
失礼ながら、初めてBambooさんのことを知った時、唐辛子をメインで作ってるなんて変わった人たちだなぁ~なんて思っていた(笑)
だけどきっと、そんなニッチな世界に飛び込んでいるからこそ面白い商品を生み出すことができて、人々に求め続けられているのだろう。

もともと東京で出版社でサラリーマンをしていた浩史さんと、靴のデザイナーをしていた妻の加弥子さんは2011年の東日本大震災の被災をきっかけに、東京から須金の町に家族4人でIターンしてきた。
観光農園での手伝いを経て、キッチンカーでのお弁当販売や空き家を改装した民宿&農家レストラン「fu do ku kan Bamboo」をオープンさせるなど様々な取り組みをしてきた。

そんな中、耕作放棄地を利用し鳥獣被害の多いこの地域でも被害を受けにくいとされる唐辛子の栽培を開始。
この自家製青唐辛子はこだわりの素材と一緒にグリーンカレーとなり、キッチンカーやお弁当販売で人気メニューとなった。
この耕作放棄地で育てた唐辛子を使ったグリーンカレーペーストを加工品にすれば、全国の人に購入してもらえる。すると唐辛子の消費が増えて、耕作放棄地が減り地元の農業が潤うことで、雇用も創出できる。そして、須金を訪れる人が増えることで地域が活性化するのではないか。
そうしたグルグルと回る風通しの良い里山の循環を創り出していきたい。
そんな想いから、加工品作りへ踏み出した。

2017年。クラウドファンディングにより多くの方の応援を得て「グルグルグリーンカレー」としてリリース。
およそ6年でここまで色々なことをしてきたのかと、驚く。

二人に初めて会いにいったのは、2019年頃だっただろうか。私が悩みの渦中にいたころ。
見知らぬ私に浩史さんはこれまでの事や地域とどう関わっているのか、これからどんな展望があるのかなどを話してくれ、最後にそばで聞いていた加弥子さんがあったかいカレーを出してくれた。
進む道が見えなかった私にとって、都会から山奥にやってきて挑戦を続けてきた二人の話は、一筋の光のようだった。
そのときの風景、肌にあたる冷たい風、カレーの美味しい匂いをはっきりと覚えている。
あれから私も悩んでいた霧の中から抜け出して、少しずつ歩んでいる。
今改めてBambooさんの歴史を振り返ると、移住当時まだまだ小さかった子どもたちを抱えながら見知らぬ土地、しかも山奥に越してきた加弥子さんを思うと、頭が下がる。

須金は決して便利とは言えない土地。
そこで子どもを育て、事業を展開し続けながら生活をしている。
加弥子さんを知るうちに、きっと唐辛子というニッチな作物を選び、次々と挑戦できるのは、彼女の視野の広さとリサーチ力も大きく起因しているのだろうなと感じるようになった。
すごく頭がキレるのに、気遣いも抜群、そして少し抜けていて可愛らしい(笑)
こんなふうに強く優しい女性に私もなりたいと、加弥子さんに会うたび思う。

この山奥では商売は続けられないのではと悩んだこともあったそうだが、2023年春には須金で「春の里山マルシェ」を主催。
あいにくの雨模様ではあったが、山奥に多くの人が訪れていた。
そして今、須金で唐辛子を楽しむカフェを開こうと準備中なのだという。
きっと二人は、須金から離れられない。須金の救世主なんだと思う(笑)

Bambooさんの唐辛子加工品は食卓で気軽に唐辛子を使えるものが多い。
まいにChiliシリーズも一味から万能調味料まで幅広いので、辛いものは苦手と思っている人にも挑戦してみてほしい!
唐辛子ラバーたちだけでなく、安心安全な食事を自宅で食べたい人、カレー好きの人など、多くの方に手に取ってもらってこの里山循環に加わってもらいたい。

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fu do ku kan Bamboo

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