鳥の声と、さわさわと畑の草木が揺れる風の音が聞こえる、
ジブリの世界に迷い込んだような優しいところ。
そんな場所が光市の山間にある。
麻野将也さんと菜都美さんが営む麻野農園と農家食堂・田毎食堂。
初めて二人と会ったとき、おとなしくて可愛い夫婦だな〜って思ってた。
出会って数年。今ではタフでえらいふざけた夫婦やな、と思っている(笑)
きっととてもシャイな二人なんだと思う。
将也さんとは不思議な繋がりがあって、わたしの従姉妹が将也さんの中学生時代の担任だったらしく、
「アッサンは英語の授業で“I like POTETO!”って言ってたよ」と従姉妹からリークがあった(笑)
“I like POTETO!”って言ってた中坊の男の子が今大人になっておいしすぎるおイモさんを作っている。
なんて夢のある話なんだ。
将也さんも菜都美さんも、ともに山口県立農業大学校の卒業生。
将也さんは勉強がしたくない!と農業の道に進んだそうだが、きっとそれが大正解。
こだわる性格ゆえに作る作物のクオリティは高い。
菜都美さんはバイト生活を経て、農業大学校へ入学。
そこで二人は同級生として出会った。
卒業後はお互いにそれぞれ農業系の会社や飲食関係の会社勤めをしていたが、結婚を考える中で自分たちの畑や田んぼを持ち自給自足的な暮らしがしたいと麻野農園を経ちあげた。
できるだけ身近にあるものを使って自然に負荷のかからない品目を作ることにこだわっている。
農薬が少なかったり使ってないお野菜は少し高いしなかなか手に入らないから、マルシェなどで手に入る特別なときに食べるものだ。
そう思っていたけれど、麻野農園が目指すお野菜は、そんな私の常識を変えようとしてくれている。
「野菜は毎日でも使える価格帯に設定することと、有機的な農産物が“特別”ではなく“当たり前”になればいいなと思っていて、そのためにも生産量を上げていきたい」と語る。
“当たり前”に自然にも身体にも優しいお野菜が買えるようになれば、みんなの意識も変化して環境もみんなの健康も良くなっていくのかも!
そんな未来素敵!!
当初は野菜とお米の栽培のみだったが、農業大学校の熱心な先生の影響からぶどうへの夢を強く抱いていた将也さんは、ぶどう栽培への挑戦も始めた。
まだまだ将也さんにとってブドウ栽培は始まったばかり。
もっと極めていきたいとのことだが、その味の濃さと美味しさに、今では麻野農園のぶどう販売を心待ちにする人が大勢いる。
私もそのうちの一人
2022年には自宅で菜都美さんが農家レストランもオープン。
おばあちゃんの家のように安心できる空間で、地元の旬のものを使った菜都美さんの滋味深いお料理が食べられるのが魅力。
調味料までこだわり、なるべく生産者さんが目に見えるものを使っている。
麻野農園のお米を使ったおにぎりと自家製お味噌で作ったお味噌汁がまた絶品で、身体の奥から喜びが溢れる。
店頭に設置した直売所では、自農園で採れたお野菜だけでなく地元の加工品や食堂で使っている食材なども販売している。
POPには生産者さんについての一言と菜都美さんの可愛い絵が添えられていて、生産者さんとお客さんが直接繋がれるような場所を積極的に提供している。
菜都美さんを見る目がガラッと変わった体験がある。
それは彼女と共に活動しているフィーメールファーマーズ(山口県東部の女性農業家グループ)で一緒に東京出店をした時のこと。
まだ3歳のお子さんの面倒を見ながらの出店だったにも関わらず、出店前日も当日もホテルではほとんど寝ずに未来の話を語り続けていた。
寝なかった理由は、東京がギラギラしていたから(笑)
この旅を経て、菜都美=「×守ってあげたい存在」→「◯熱く、タフな女」となった。
やはり農家の嫁は常に自然からエネルギーをいただいているから生きる力に溢れているのだ。
二人を見ていると、無理のない誠実な生き方をしていると感じる。
そんな二人が作る空間だから、食堂にいくと子どもたちがのびのびと過ごしている。
若い人も、年配の方もゆったりとした時間を過ごす。
この誰も排除されない、のんびりとした雰囲気が心地よく、つい長居をしてしまう。
大事にしていることは「欲張らないこと」「誠意を持って関わること」
あぁ、だからあの空間が作られるのか。核の部分が生き方に表れているんだなぁと腑に落ちた。
そんな二人はこれからどんな道を歩むのだろう。
将也さんからは農産物を作り続けていきたい、野菜の品目数を絞って技術を向上する、とストイックな答え。
いろんなタイプの農業者がいるけれど、将也さんはアスリートな職人タイプなのかもしれない。
大好きなおいもさんも夢だったぶどうも、こんなに真っ正面から向き合ってもらえたらきっと喜んでいるだろう。
菜都美さんは現在第二子を妊娠中。
子どもたちに向き合うためにも2024年秋から田毎食堂はしばらくおやすみとなる。
そんな中でも、子育てが落ち着いたら街の人も巻き込んだお米栽培や田舎を維持する学びの場作り、味噌やお漬物づくりのワークショップなど、多岐にわたるビジョンを持っている。
それは、あの東京の夜に語っていた夢。
カタチは変化しながらも、「田舎の暮らしや農業を伝える人」という目指す姿があるからブレない。
以前参加した味噌づくりワークショップで作ったお味噌が美味しすぎて、我が家の味噌の消費量がすごい。
もっと作ればよかったと後悔するほどだったので、開催される時はぜひ参加してほしい。
これからもっともっと、有機的なお野菜や農業、田舎の暮らしが身近になっていくといいなと、思う。
それは今世の中から求められていることだとも感じている。
二人が目指す未来を一番楽しみにしているのは、私なのかもしれない。
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麻野農園
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