私の中で、会うと元気になる夫婦の代表格、胡蝶蘭農家「キノイ」の益永夫婦。
底抜けに明るくて、やる気に満ち満ちてる郁恵さんと、その様子を少し離れたところで優しく見守る茂明さん。
二人に会うと「今日もいい一日だったなぁ」とついつぶやきが漏れる。
そんな二人が作っているのは、高貴で優雅に咲く胡蝶蘭。
胡蝶蘭と言えば、高価でフォーマルなお祝いに贈られるお花のイメージ。
そんな胡蝶蘭の原産は、通年気温が高い熱帯の地域・東南アジア。
しかも、もともとは「着生ラン」と言って樹木に着生して育つ植物なんですって!!
(画像のように樹に着生しているのだそう)
これには本当にびっくり!
なんと不思議な植物何だろう、、、
熱帯地域の植物なので、日本では23度程度に保たれた温室で栽培されている。
ほとんどの苗は台湾で栽培され、その苗を輸入。その後半年ほど日本で育てながら花を咲かせるのだそう。
花を咲かせる前の胡蝶蘭も初めて見たのだけど、何かに似ている、、、
そう、まるで…アスパラ!
このアスパラのように見える状態はまだ苗が届いてから2か月程。
あと4ヶ月、この温室で育ち咲き始めると寄せ植えをして出荷される。
現在キノイの温室は、柳井市の大畠と余田の2か所に分かれている。
大畠の温室がまたとても良い立地で、目の前に瀬戸内海が広がりふと目を移すと多島美を見渡すことができる、最高の景色。
日照時間も大畠、余田ともに長いそうで、より東南アジアに近い気温に無理せず近づけられるため、胡蝶蘭を育てるのに適した環境づくりができるのだという。
広々とした温室の中には、約2万2千株もの胡蝶蘭。1か月間で4,000株近くを出荷し、2週間に1度2,000株が届く。
そんな多忙な状況でありながら、温室の中はとても清潔感があり、整っている。
「きれいな温室と綺麗な花は比例すると思ってるから、その部分は心掛けてるんだよ」
その言葉通り、どの花も本当に美しい。
そして、茂明さんの作業を見ていてもとても丁寧。
その様子はこれからお祝いの場に出かけていく娘を綺麗に整えてあげているお父さんのようだ。
夫茂明さんは下関市出身で、実家が胡蝶蘭農家。そして大学でも胡蝶蘭について研究し、オランダでの蘭栽培研修で学んできた胡蝶蘭一筋。
作業をする姿も職人そのもの。
一方郁恵さんは、東京都出身で大学では食品化学を学び、農業とは縁遠い場所にいた。
そんな郁恵さんが農業と触れるきっかけになったのは、就職活動を辞め進む先を決めかねていた大学生時代に、ゼミの先生からの勧めでスイスの有機農法研修へ行くことになったことだった。
ちょっとやってみるか、くらいの気持ちで行った研修だったが、研修の同期として茂明さんと出会い交際につながったのだという。
その後、結婚し共に胡蝶蘭農家として茂明さんの実家の胡蝶蘭栽培を手伝い始めた二人。
2015年、一度胡蝶蘭から離れることも考えたそうだが、植物との生活を続けるべきというアドバイスを得て独立を決意。場所探しをしていた中で花卉農家仲間からの口添えで、今の大畠の温室が見つかったのだという。
ちょうど持ち主だった花農家さんが亡くなり、受け継ぎ手を探されていたところだったそうで、あれよあれよという間に2018年「キノイ」が誕生した。
そして、開業から5年。出荷先も倍以上に増え、余田にも新しい温室を作り、会社は2023年に法人化。
しかし、法人後すぐやってきたコロナ後における花卉市場価格の暴落。一度は終わりを覚悟したそうだが、そこから盛り返した。今では従業員も10人を超えるほどとなった。
起業から法人化までのスピード感、ジェットコースターの様な危機を乗り越える力、どんどんと広がっていく人との繋がりは、苦しいときも笑顔の益永夫婦だからこそできたことなのだと思う。
胡蝶蘭は意外にも手がかからず育てやすいそうで、花が落ちた後もう一度咲かせることもできるため素人にもおすすめのお花であることを二人から教えてもらい初めて知った。
新規開店などお祝いの場を彩る植物だと思っていたが、思った以上に日常に溶け込ませることができる。
卓上サイズのミディ胡蝶蘭はより暮らしに取り入れやすい。
私も自宅用、友人へのプレゼント用にとよく利用させてもらう。
郁恵さんはお祝いなど晴れの日だけでなく、大切な誰かが亡くなった時にそばに居てくれる、心を癒してくれる花としても使ってほしいという。
近頃は胡蝶蘭を見ているといつも笑顔で楽しそうな益永夫婦が思い浮かんでくるようになった。
この優雅で美しい胡蝶蘭が二人を照らしているのではなく、二人の笑顔が胡蝶蘭を照らしているのだと、そう感じる。
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キノイ
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